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コーチングコラム

コーチングセッションを組み立てる
2008年5月09日

コーチングの基本スキルを習得したら、次は一連の「セッション」を組み立てていくことを学びます。十分な信頼関係を構築した上で、相手の中にあるものを引き出し、最後は具体的な行動に結びつけます。それにより、成果を上げていくのです。


前回まででコーチングの基本スキルについて、一通りの説明をしてきました。それらの基本スキルを使いこなせるようになれば、職場でのコミュニケーションは、大幅に改善されるでしょう。とは言え、個々のスキルだけではまだ、本来のコーチングとは呼べません。


例えばプロのコーチの場合、「セッション」と呼ばれる一連の対話(通常は30分~1時間程度)を定期的に行ない、クライアントの目標達成をサポートしていきます。


セッションの中で、個々のコーチングスキルを駆使していくのですが、大切なのは一つ一つのセッションの会話の流れをしっかりと組み立て、そこからクライアントが最大限の成果を得られるように運営することです。


ゴルフに例えて言えば、基本スキルの習得は、ティーショットやアプローチショット、パッティングなどの技術を個別に練習することに過ぎません。それらの技術を駆使して、実際にコースを回ってみてはじめて、ゴルフになるのです。コーチングも同様で、基本スキルを使いこなし、数十分にわたるクライアントとの一連の対話を組み立てることをしてはじめて、「コーチング」なのです。


セッションの組み立てのことを、銀座コーチングスクールでは「ストラクチャー」と呼んでいます。ストラクチャー(Structure)とは、英語で「構造」という意味で、ここではコーチングの仕組み、仕掛け、プロセスのことを指します。


セッションは「ラポール」・「発見」・「行動」の3つのモードで構成されます。「ラポール」とは、コーチとクライアントとの間の信頼関係を指し、コーチングが機能するのに不可欠な要素となります。基本的には「ラポール」→「発見」→「行動」の順番でセッションを進めて、それがセッションの組み立て、すなわちストラクチャーとなります。


もちろん、実際のセッションでは、各モードを行きつ戻りつすることもありますが、セッションを組み立てるガイドラインとして意識しておくことで、クライアントの「気づき」と「行動」を促すというコーチングの価値を実現するのです。


最初に「ラポール」を築くのが大切なのは、相手の中にあるものを引き出す環境を整備することが必要だからです。何でも自由に話せる雰囲気づくりがなければ、十分なコミュニケーションはできるものではありません。


「ラポール」を築くことができたら、次は「発見モード」へと進みます。文字通り、様々な質問を通じて、現状把握や目標設定、目標へ至るまでの筋道などをクライアントの中にあるものを「発見」し、引き出していきます。セッションでは中心となる部分であり、さまざまなアイデアや「気づき」が生まれる時間です。


「発見」モードで十分に引き出し、「気づき」を得たら、最後は「行動」モードへと移ります。ここは具体的な行動をクライアントがコミットする場面です。


クライアントが行動を起こすことが、コーチングの端的な効果であり、この部分がないと、セッションは「画竜点睛を欠く」こととなります。実際のセッションでは、クライアントがいつまでに何をするのかを明確に宣言し、コーチは、前回学んだ「リクエストする」スキルを用いて、ポンと背中を押す感じになります。そして次の回のセッションでは、その行動内容を実行したのかどうか、実行してどうなったのか、といったテーマで開始することになります。


これら「ラポール」・「発見」・「行動」のそれぞれのモードで、コーチングの基本スキルを生かしていきます。例えば「ラポール」モードでは、「認める」「聴く」といったスキルを十分に使うことで、相手の心を開き、互いの信頼関係、すなわちラポールを築くことができるのです。


「発見」モードでも、もちろん、「認める」「聴く」のスキルを使いつつ、さらに「質問する」スキルで相手の中にあるものを引き出し、発見していきます。効果的に「フィードバックする」スキルを用いることで、さらなる「気づき」をもたらすこともできるのです。


「行動」モードでは、先述のとおり、力強く「リクエストする」スキルを使うことになります。コーチはクライアントの行動を後押しし、行動は成果を生むのです。


基本スキルを駆使し、セッションを組み立てていくとは、以上のようなことです。イメージはつかんでいただけたでしょうか。5つの基本スキルを習得したら、次はぜひ、一連のセッションを組み立てることにチャレンジしてください。