「共感」と「同感」の違い- 関わり方が変わると、対話が変わる

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「相手に寄り添うことが大事です」とコーチングの世界ではよく言われます。
けれど、その"寄り添い方"にはいくつかの種類があることをご存じでしょうか。

なかでも鍵になるのが、「共感」と「同感」という二つの言葉です。

どちらも似た響きを持ちながら、意味合いや使いどころは少しずつ異なります。
その違いを理解しているかどうかで、クライアントとの対話の深まり方は驚くほど変わってきます。

この記事では、コーチングの現場はもちろん、日常のコミュニケーションにも役立つ「共感」と「同感」の違いを、コラムのような形でゆっくり紐解いてみたいと思います。

共感と同感、どこが違うのでしょうか?

まずは、二つの言葉のイメージを静かに並べてみます。

「共感」は、相手の感情や状態を、自分のことのように感じ取ろうとする姿勢です。
「同感」は、相手の感情だけでなく、考え方や意見に対して「私もそう思う」と賛成することです。

どちらも「わかりますよ」というニュアンスを含んでいますが、立ち位置が少し違います。

共感は、相手の世界の中に一歩入って「そう感じているんですね」と寄り添うこと。
同感は、そこに「私も同じです」という自分の視点が重なるイメージです。

どちらが良くて、どちらが悪いという話ではありません。

ただ、その違いを知らないまま使っていると、クライアントのための時間のはずが、いつの間にかコーチ側の価値観が前面に出てしまうこともあります。

だからこそ、あらためて言葉を整理しておくことには大きな意味があります。

共感とは、感情のそばに一緒に立つこと

たとえば、クライアントがこんなふうに話してくれたとします。

「会議で上司に強い言い方をされてしまって......。あの一言がずっと頭から離れないんです。」
このときの共感は、「その出来事がどれほど心に響いたのか」に意識を向けるところから始まります。

「その一言が、今も胸の中に引っかかっているのですね。」
「思い出すたびに、悔しさやモヤモヤした感じが蘇ってくるのかもしれませんね。」
事実関係を評価するのではなく、「どんな気持ちでいるのか」を言葉にしてみる。
それが、共感的な関わり方です。

自分の感情に名前を付けてもらえたとき、人はふっと肩の力が抜けるものです。

「わかってもらえた」と感じられると、クライアントは心のドアを少しずつ大きく開き、思いや考えをさらに話しやすくなります。

コーチングに限らず、信頼関係づくりの基盤には、いつもこの「共感」が静かに横たわっています。

同感とは、「私もそう思う」と賛成すること

では、同じ場面で「同感」で返すとしたらどうなるでしょうか。

「それはつらいですよね。自分でも同じように感じると思います。」
この一言には、「あなたの感じ方はもっともだと私は思います」というニュアンスが含まれています。

クライアントは、「自分の感情や受け取り方はおかしくないんだ」と感じやすくなり、自己信頼が少し強くなっていきます。

同感は、クライアントの決意や選択をそっと後押しするときにも力を発揮します。

たとえば、悩んだ末に出てきた答えに対して、「その選択を大事にしたいというお気持ち、私にも伝わってきます」と言葉を添えることで、「これでいいんだ」と一歩を踏み出す勇気につながることもあります。

一方で、同感には少しだけ注意したい点もあります。

同感が「距離を近づけすぎてしまう」瞬間

共通点を見つけようとするあまり、話の主役がいつの間にかクライアントから自分に移ってしまうことがあります。

「自分も以前、似たような経験があって......」
「自分のときはもっと大変でしたよ。」
そうやって自分のエピソードを重ねているうちに、「自分ならこうするのに」「そんなに気にすることはないのに」といった評価やアドバイスが心の中で大きくなり、言葉の端々に滲み出てしまうことがあります。

表面上は「わかりますよ」と寄り添っているようでいて、実はクライアントの世界から少しずつ離れてしまっている――そんな状態になるのは、コーチとしては避けたいところです。

コーチングの目的は、コーチの正解を提示することではなく、クライアント自身の中から答えが見えてくるように支援することです。

そのためにも、「今この瞬間の自分は、共感から話しているのか。それとも、自分の価値観から同感しているのか」を、ときどき静かに確かめてみることが大切です。

コーチとして大切にしたい「ちょうどいい距離感」

共感と同感をうまく使い分けるうえで、コーチとして意識しておきたいのは、「どの位置から相手を見ているか」という感覚です。

まずは、共感を土台にすること。

出来事をすぐに「良い・悪い」でジャッジするのではなく、その出来事を前にしてクライアントがどんな気持ちでいるのかに、そっとライトを当ててみます。

そして、自分の価値観や経験はいったん横に置いてみること。

「自分ならどうするか」という物差しを手放し、「この人にとって、これはどんな意味を持つ出来事なのだろう」と問いを変えてみると、見えてくる景色が変わっていきます。

そのうえで、クライアントが大切にしている価値観や選択がはっきりしてきたとき、「その選択を大事にしたいというお気持ち、よく伝わってきます」といった形で、そっと同感を添えてみる。

同感は、クライアントの可能性を広げる方向に使うと、とても心強い味方になります。

セッションが終わったあとで、「あのときの自分は共感に立っていたかな? それとも、少し自分の考えに寄りすぎていたかな?」と振り返ってみる習慣を持つと、自分の関わり方のクセにも少しずつ気づいていけるはずです。

日常の会話でも、すぐに試せる小さな工夫

共感と同感の違いは、クライアントとのセッションだけでなく、ふだんのコミュニケーションにもそのまま活かすことができます。

職場での1on1や面談、同僚との雑談、ご家族や友人からの相談など。誰かが悩みや戸惑いを打ち明けてくれたとき、私たちはつい「こうしたら?」「それはこうあるべきだよ」と答えを伝えたくなります。

そんなとき、少しだけ呼吸をおいてみて、
「それはショックでしたね。」
「そんなふうに言われて、戸惑ってしまったのですね。」
と、まずは感情に寄り添うひと言を返してみる。

そして、そのあとに「その上で、あなたはどうしていきたいと思っていますか?」と問いかけてみる。

たったこれだけでも、会話の流れや相手の表情がふっと変わる瞬間に出会えるかもしれません。

「共感」と「同感」の違いを意識することは、日々の対話に小さな余白を生み出してくれるのだと思います。

体験講座で、「共感」と「同感」の心地よさを味わってみる

ここまで、文章を通して「共感」と「同感」の違いを一緒に眺めてきました。

ただ、実際の対話の場面では、言葉の意味を知っているだけでは追いつかない部分もたくさんあります。声のトーンや表情、沈黙の間合い、自分の内側に起こる反応......そういったものが重なり合って、その場ならではの空気が生まれていきます。

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