3つの「きく」を知ると、人間関係が少しラクになる

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「ちゃんと聞いているつもりなのに、なぜかうまく伝わらない」
「そんなつもりで言ったんじゃないのに...」。

仕事でもプライベートでも、そんなすれ違いが重なると、相手との距離が少しずつ遠くなっていくようで、切ない気持ちになります。

もしかしたらそれは、言葉の選び方よりも、「きき方」のほうに原因があるのかもしれません。

日本語の「きく」には、「聞く」「聴く」「訊く」という3つの漢字があります。
同じ読み方でも、意味も関わり方の深さも少しずつ違います。

今回は、3つの「きく」を入口に、コミュニケーションを少しラクにするヒントをお届けします。

「聞く」──音や言葉がただ耳に入ってくる「きく」

最初の「きく」は「聞く」。いちばん馴染みのある漢字かもしれません。

オフィスでパソコンに向かっているとき、少し離れた席の会話がふと耳に入ってくる。
電車の中で、意識していなくてもアナウンスが自然と届いてくる。
こちらから「聞こう」と構えなくても、音や言葉のほうから勝手に飛び込んでくるような感覚です。

会議の場を思い出してみてください。

その場にはたしかに出席していたし、声も聞こえていた。けれど、後から内容を思い出そうとすると、細かいところがすっかり抜け落ちている...。

そんな経験はないでしょうか。

このとき私たちは、「聞く」のレベルにとどまっています。
音は耳に届いているけれど、心や意識までは届いていない。そんな、少し距離のある「きく」です。

「聴く」──耳と目と心をそろえて、相手に向き合う「きく」

2つ目の「きく」は「聴く」。

「聴」という字をよく見ると、「耳」に「目」、そして「心」がくっついています。
つまり「聴く」とは、耳だけでなく、目と心も総動員して相手に向き合う行為だと言えそうです。

相手の言葉を耳で受け取りながら、表情の変化や視線の動き、声のトーン、ちょっとした沈黙やため息にもそっと意識を向けてみる。

その背景にある気持ちや状況を、心の中でそっと想像してみる。

こうして相手に意識のピントを合わせていくと、「ただ話を聞いているとき」とは、場の空気が少し変わります。
相手も、「この人はちゃんと分かろうとしてくれている」と感じると、安心して、もう一歩踏み込んだ本音を話してくれるようになります。

コーチングの現場でとても大切にしているのは、この「聴く」の姿勢です。

一生懸命メモを取ったり、「次は何を質問しよう」と頭の中で組み立てたりすること自体は悪いことではありません。

ただ、それが行きすぎると、目の前の相手よりも、自分のノートや自分の頭の中ばかりを見つめてしまいがちです。

そんなときは、意識の矢印をそっと相手に向け直してみます。

「いま、この人はどんな気持ちで話しているのかな」と自分に問いかけてみる。

そこから、「聴く」が始まります。

「訊く」──相手の中にある答えを照らす「きく」

3つ目の「きく」は「訊く」。

こちらは、「質問する」「問いかける」という意味合いの強い「きく」です。

自分の興味や関心から相手に問いを投げかけることで、その人の中にある考えや気持ちが、少しずつ言葉になっていきます。
上手な「訊く」は、相手の中にすでにある答えに、そっと光を当てるような働きをします。

「どうしたらいいか分からない」と感じていた人が、質問に答えているうちに、自分の言葉で「本当はこうしたかったんだ」と気づいていく。

コーチングの場では、そんな瞬間に立ち会うことがよくあります。

一方で、「訊く」ばかりが強くなると、話は少しややこしくなります。

相手の気持ちを受け止める前に、「どうして?」「本当に?」「それで?」と矢継ぎ早に質問を重ねてしまうと、問いかけているつもりでも、相手には「詰められている」「責められている」と感じられてしまうことがあります。

だからこそ、「訊く」は「聴く」のうえにそっと重ねるのがよさそうです。

まずはしっかり「聴き」、そのうえで「この人の役に立つとしたら、どんな問いかけだろう」と考えてから、「訊く」を差し出してみる。

順番を意識するだけで、同じ質問でも、届き方がやわらかく変わっていきます。

3つの「きく」を意識してみると、何が変わるのか

「聞く」「聴く」「訊く」。

この3つの違いを知っているだけでも、日常のコミュニケーションには、ちょっとした心の余裕が生まれます。

「今、自分はどの『きく』を使っているんだろう?」と、ときどき振り返ってみると、同じ会話も違って見えてきます。

職場では、上司や部下、同僚の言葉を「聞く」だけでなく、「いま、この人はどんな状況で、どんな気持ちで話しているのかな」と一度「聴く」に切り替えてみることで、同じ一言でも、受け取り方が変わってきます。

指示や報告の裏側にある意図が見えてくると、こちらの動き方も少しラクになります。

家庭でも、「早く結論を出したい」「ついアドバイスをしてしまう」という場面ほど、あえて「まずは聴いてみよう」と心のブレ
ーキを踏んでみる。

すると、パートナーやお子さんから、「実はずっと前からこう思っていたんだよね」といった本音が出てくることがあります。
そんな言葉は、急いで「訊く」ばかりでは、なかなか出てこないものかもしれません。

大げさなことをしなくても、3つの「きく」を少し意識するだけで、人との関係の手触りが、じわじわとあたたかいものに変わっていきます。

「きく」を、実際の会話で試してみたい方へ

ここまで読んでくださった方の中には、

「たしかに大事そうだけれど、実際の会話の中でうまくできるか不安だな」
「自分の"きくクセ"を、客観的に見直してみたい」

と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

銀座コーチングスクールでは、コーチングの雰囲気を気軽に味わっていただける無料体験講座をご用意しています。

コーチングとは何かという基本的なお話に加えて、「聴く」「訊く」を取り入れた関わり方を、簡単なワークを通して実際に体験していただける内容です。

「もう少し詳しく知りたいな」「自分の『きく』を試してみたいな」と感じていただけたなら、ぜひ一度のぞいてみてください。

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