部下の行動が変わる「解決志向コーチング」とは?─問題志向との違いと、明日から使える質問のコツ

「営業成績の悪い部下には、つい厳しく言ってしまう」
「面談がつい"ダメ出しの時間"になってしまう」
そんなお悩みを持つ管理職・人事ご担当者は少なくありません。
その背景には、多くの上司が無意識のうちに「問題志向」の関わり方に偏ってしまっている、という構造があります。
本記事では、問題志向と解決志向の違いを分かりやすい会話例でご紹介しながら、 部下のやる気と行動を引き出す「解決志向コーチング」のポイントをお伝えします。
なぜ管理職は「問題志向」になりやすいのか
先日、営業リーダーの方からこんなご相談を受けました。
「営業成績の悪い部下にはどうしても厳しくなってしまい、コーチングがうまく使えないんです。」
ビジネスの現場では、課題や悩み、滞っている仕事があると、 その原因やうまくいかない理由を聞き出し、 そこから解決策を考えるのが、ある意味「当たり前」になっています。
このようなアプローチが、いわゆる「問題志向」です。
問題志向そのものが悪いわけではありませんが、 部下とのコミュニケーションが「問い詰め」「ダメ出し」になってしまうと、 次のような影響が出やすくなります。
・部下が「責められている」と感じやすい
・言い訳づくりにエネルギーを使ってしまう
・「自分はダメだ」という自己評価が強まり、行動が止まる
結果として、上司が意図した「成長のための指摘」が、 部下にとっては「やる気を奪う時間」になってしまうことも少なくありません。
会話例でわかる「問題志向」と「解決志向」の違い
違いがイメージしやすいように、 同じテーマ(営業目標)を扱う会話例で比較してみましょう。
問題志向のケース
営業L:「今月の営業目標、どうしようと思ってる?」
部下:「頑張ります......。」
営業L:「"頑張ります"って......。月初に決めたことも進んでないよね。なんで、できていないの?」
部下:「なんでって言われても......。なかなか先方と連絡がつかなくて......。」
営業L:「じゃあ、先方と連絡が取れる時間は、リサーチできたの?」
部下:「いや、まだ......。」
営業L:「"まだ"って......。やる気ある?」
この会話では、上司の関心が「なぜできていないのか」「どこが悪かったのか」といった過去の原因に向いています。
部下は、自分を守るための言い訳を考えたり、 「また怒られるのでは」と身構えたりしやすい状態です。
一方で、解決志向では、同じ状況をこう扱います。
解決志向のケース
営業L:「今月の営業目標、なかなか厳しそうだけど、どうかな?」
部下:「頑張ります......。」
営業L:「うん、そうだね。 今、目標達成に近づくために、どんな計画で進めていこうと考えている?」
部下:「そうですね......。月初に考えたA社とB社に、しっかり提案を行おうと思っています。」
営業L:「そうだったね。A社とB社は信頼も厚いし、アップセルも狙いたい先だよね。他にはどうだろう?」
部下:「そうですね......。新規のお客様にもアプローチしなくちゃいけないのですが、それがまだ......。」
営業L:「そうか。少し行き詰まっているように感じているんだね。 何があれば、次の一歩を踏み出せそうだと感じる?」
ここで上司が問いかけているのは、「どうすればできるか」「何があれば前に進めそうか」といった未来の行動や次の一歩です。
同じ「営業目標が厳しい」という状況でも、 質問が変わることで、部下の意識は 「できなかった理由」から「これからできること」へと自然に切り替わっていきます。
「解決志向」とは、何に焦点を当てることか
タイトルにもある「解決志向」とは、 原因を徹底的に掘り下げることではなく、『課題が解決したら、どうなっていたいのか?』『解決しているとき、自分はどんな行動をしているのか?』といった、うまくいっている状態をイメージしてもらうアプローチです。
このスタンスを会話の中で徹底していくと、 部下との対話は次のように変わっていきます。
・「できていない点の指摘」から「既に持っている強み・資源の発掘」へ
・「過去の失敗の振り返り」から「望ましい未来からの逆算」へ
・「やらされ感のある指示」から「自分で決めた一歩」を尊重する関わりへ
前に進むためには、原因やうまくいかない理由を整理することも大切です。
しかし、それだけに固執しすぎると、
・過去のネガティブな出来事ばかりに意識が向く
・自信や自己効力感が下がってしまう
・どうせ自分には無理だ」という思い込みを強めてしまう
といったリスクもあります。
『解決した状態をイメージさせる』ことで、 部下が前向きに行動を起こせるようにサポートする。
これが、解決志向コーチングの大きな狙いです。
管理職・人事こそ「解決志向コーチング」を学ぶ価値がある
今、多くの企業が「1on1ミーティング」や「対話型マネジメント」に取り組んでいます。 一方で、現場からは次のような声も聞こえてきます。
「結局、業務報告の場になってしまう」
「雑談で終わり、成長につながっている実感が薄い」
「部下の愚痴を聞くだけで、何も変わらない」
こうしたお悩みの多くは、 問いかけのスタイルが"問題志向"のままになっていることが一因です。
解決志向コーチングの考え方と質問のコツを身につけることで、
・部下が「自分で考え、自分で決める」習慣が育つ
・叱責や指示に頼らず、成果と成長を同時に追求できる
・1on1や面談の時間が、「振り返り」だけでなく「未来をつくる場」になる
といった変化が期待できます。
そして、これらは管理職・人事の方が組織にもたらせる、 大きな付加価値でもあります。
解決志向コーチングを身につける近道は「体験」から
「解決志向の質問が大事なのは分かった。でも、 いざ部下を前にすると、つい元の話し方に戻ってしまう......。」
そんな方も少なくありません。
理由はシンプルで、"頭で理解しただけ"では、実際の会話のクセはなかなか変わらないからです。
だからこそ、解決志向コーチングを身につける近道は、 理論だけでなく、体験を通じて学ぶことにあります。
・自分自身がコーチングを受けてみる
・他の参加者とのロールプレイを通じて、質問を実際に口に出してみる
・フィードバックを受けながら、問いかけの言葉を整えていく
こうした「場」での体験を通してはじめて、 現場ですぐに使えるレベルのコーチングスキルが身についていきます。
コーチングスキルを使えるようになるために
銀座コーチングスクール(GCS)では、初めての方にもコーチングを身近に感じていただける「コーチング無料体験講座」を開催しています。
「1on1をもっと意味のある時間にしたい」
「"注意・指摘"だけに頼らないマネジメントを身につけたい」
「将来的に社内コーチやプロコーチとしてのキャリアも視野に入れている」
そんな方にとって、 解決志向コーチングの入り口として最適な機会です。
『解決した状態をイメージさせる』質問を、 明日からの部下との対話に取り入れていきませんか。
(執筆:銀座コーチングスクール法人事業部・葉山みなみ)