「ビジョン」と「ゴール」の違いを知る-コーチングがうまくいく秘訣

コーチングのセッションが、どこかふんわりしたまま終わってしまう。
クライアントの表情もいま一つ晴れない。
「今日は何が進んだんだろう?」と、自分の中に小さなモヤモヤが残る。
振り返ってみると、その多くは「最初の目標設定」があいまいだったときに起こっています。
そして、その背景には「ビジョン」と「ゴール」の違いが曖昧なまま、話を進めてしまっていることがあります。
今回は、ある理学療法士さんのエピソードを通して、ビジョンとゴールをどう見分けるのか、そしてその違いがクライアントの可能性をどう広げてくれるのかを、一緒にたどってみたいと思います。
ゴルフ復帰を願う患者さんとの出会い
病院のリハビリテーションセンターで働く、ある理学療法士さんがいます。
この方は銀座コーチングスクール(GCS)でコーチングを学び、そこで身につけた「聴き方」や「問いかけ方」を、日々の現場で活かしながら患者さんをサポートしています。
その理学療法士さんのもとに、ゴルフが大好きな患者さんがいました。
その方は、こんなふうに話し始めます。
「またゴルフができるようになるまで回復したいんです」
好きなことをもう一度楽しみたい。
その一心で、リハビリに取り組んでいる様子が伝わってくる言葉でした。
けれど、事故による後遺症で腕が不自由になり、「ゴルフができる程度までの回復は難しい」という医師の診断も出ていました。
それでも患者さんは、「ゴルフをもう一度やりたい」「そのために頑張りたい」という思いを、決して手放そうとはしません。
もしあなたがコーチだったら、どのようにこの方に関わろうと思うでしょうか?
「なんとかゴルフに近づける方法」を一緒に探そうとするかもしれませんし、「現実と折り合いをつけながら別の楽しみを見つけていきましょう」と伝えたくなるかもしれません。
ここで、その理学療法士さんは、少し違う角度から患者さんの話を聴き始めました。
「ビジョン」と「ゴール」を言葉で分けてみる
本題に入る前に、ここで一度「ビジョン」と「ゴール」という言葉の意味を、言葉で整理しておきたいと思います。
ビジョンとは、その人が大切にしたい価値観や生き方を含んだ「ありたい姿」です。
将来のどこかで、「こんな状態で居られたらいいな」と感じる、その方向性そのものと言ってもいいかもしれません。
一方でゴールは、そのビジョンに近づくための「具体的な目標地点」です。
いつまでに、何を、どのくらいできるようになりたいのか。
達成できたかどうかが、できるだけはっきり分かるように言葉で表したものです。
では、先ほどの患者さんの「ゴルフができるようになりたい」という言葉は、ビジョンでしょうか、それともゴールでしょうか。
一見すると「目標」のように聞こえますが、その奥にはもっと本質的な願いが隠れていそうです。
「ゴルフをしたい」の奥にある、本当の願い
理学療法士さんは、「ゴルフ」という具体的な行動そのものにだけ注目しませんでした。
代わりに、こんな問いかけをしながら、じっくりと患者さんの話を聴いていきます。
「ゴルフをしているときって、どんな気持ちだったんですか?」「コースに出ている時間の中で、一番好きだった瞬間はどんなときでした?」「その時間は、あなたにとってどんな意味を持っていましたか?」
患者さんは少しずつ言葉を探しながら、やがてこう話してくれました。
「大自然の中で体を動かして、汗をかくことが、生きがいだったんです」
このひと言で、見えてくる景色が変わってきます。
この患者さんにとって、本当に大切だったのは「ゴルフ」という競技そのものではなく、大自然の中で体を動かし、汗をかき、「ああ、今日もいい時間を過ごしたな」と感じている自分の姿。
その状態こそが、ビジョン、つまり「ありたい自分の姿」だったのだと分かってきます。
ゴルフは「ひとつのゴール」、生きがいは「ビジョン」
ビジョンがはっきりしてくると、選べる道が増えていきます。
理学療法士さんと患者さんは、そこで視点を少し切り替えました。
「ゴルフ以外のやり方でも、この"生きがい"は実現できるのではないか」と。
二人でいくつかのアイデアを出していく中で、「登山」という選択肢が浮かび上がります。
山道を自分のペースで歩き、自然の空気を味わい、汗をかきながら景色を楽しむ。
頂上に着いたときには、その日一日の達成感を味わうことができる。
登山なら、腕の状態に配慮しながらでも、「大自然の中で体を動かし、汗をかく」というビジョンを実現できそうだ――そんなイメージが、少しずつ膨らんでいきました。
こうして患者さんは、「ゴルフができるようになる」というひとつのゴールだけを追い続けるのではなく、「生きがいを感じる時間を取り戻す」という、より本質的なゴールに目を向けることができるようになっていきます。
ここで理学療法士さんがしていたのは、ゴルフができるようになるという具体的な願いを否定することではありません。
その願いを丁寧に受け止めたうえで、その奥にあるビジョンを一緒に言葉にし、そのビジョンを実現する別のゴール(登山)を、一緒に見つけていったのです。
もし「ゴルフをすること」そのものをビジョンだと捉えてしまっていたら、登山という選択肢にはなかなかたどり着けなかったかもしれません。
コーチが「ビジョン」と「ゴール」を区別できると、何が起こるか
このエピソードから分かるのは、ビジョンとゴールをきちんと区別できるだけで、クライアントの選択肢がぐっと広がるということです。
ビジョンは、その人が人生の中で大切にしたい「あり方」です。簡単には揺らぎません。
ゴールは、そのビジョンに近づくための具体的な通過点であり、体調や環境など、状況の変化に合わせて柔軟に変えていけるものです。
だからこそコーチは、「このゴールが難しいなら諦めましょう」で終わらせてしまうのではなく、「このビジョンを満たす別のゴールは何だろう?」と一緒に探していくことができます。
今回ご紹介した関わりは、GCSのクラスB(J後半)で扱う目標設定や、クラスC(K前半)で扱う戦略の共有といった内容がベースになっています。
とはいえ、決して特別な才能が必要なわけではありません。考え方の枠組みと、それを支えるコーチングスキルを学ぶことで、誰でも少しずつできるようになっていくものです。
「自分もこんな関わりができるようになりたい」と感じた方へ
ここまで読み進める中で、「クライアントや部下の本当の願いに、もっと寄り添えるようになりたい」と感じられたかもしれません。
あるいは、目標設定の場面でもっと相手の可能性がふっと広がるような関わりができたら、とイメージされた方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、「いきなり本格的なクラスに申し込むのは、まだ少し勇気がいる」という感覚も、ごく自然なものだと思います。
雰囲気や講師との相性、自分の仕事や生活とのなじみ方など、実際に触れてみないと分からないこともたくさんあります。
そんな方のために、銀座コーチングスクールでは、コーチングに興味を持ってくださった方が、まず気軽に一歩を踏み出せるように「コーチング無料体験講座」をご用意しています。
学びの入口としての「コーチング無料体験講座」
コーチング無料体験講座では、コーチングの基本的な考え方に触れながら、簡単なミニワークを通じて、実際にコーチング的な関わりを体感していただけます。
聴き方や問いかけを少し変えるだけで、相手の話がどう変わるのか。
ビジョンとゴールのような「ものの見方」があると、対話の深まり方がどう変わるのか。
そうしたことを、短い時間の中でも、手触りのある感覚として持ち帰っていただけるような内容になっています。
あわせて、クラスA(J前半)以降の学びの流れや、どのようなステップでスキルが身についていくのかもご紹介しますので、「自分の仕事や暮らしの中で、どう活かせそうか」というイメージも持ちやすくなるはずです。
人をサポートする力の第一歩を、ここから
ビジョンとゴールの違いが分かるようになると、私たちの関わり方は少しずつ変わっていきます。
「できるか、できないか」だけで判断するのではなく、その人が大切にしたいものに寄り添いながら、一緒に道を探していけるようになります。
それは、コーチとしてのセッションだけでなく、職場での1on1や同僚との対話、家族とのコミュニケーションなど、日々のさまざまな場面で生きてくる「人をサポートする力」です。
もし今、「自分もそんな関わりができるようになりたい」と、心のどこかで感じてくださっているなら、無料体験講座はちょうど良い一歩目になると思います。
よろしければ、まずは気軽に、扉をノックするつもりでのぞいてみてください。