なぜ人は教えたくなる?自己決定理論から学ぶコーチングとの違い

銀座コーチングスクール(GCS)広報チーム 赤川美佐子です。
仕事で後輩から相談を受けた時。
部下の育成をしている時。
友人から「どうしたらいいと思う?」と相談された時。
私たちはつい、
「こうしたらいいんじゃない?」
「私だったらこうするかな」
と、アドバイスをしたくなります。
相手に少しでも役に立ちたい。
自分が経験してきたことを伝えたい。
遠回りをしてほしくない。
そんな思いから、自然とアドバイスをしたくなるのではないでしょうか。
私自身も、英語やコーチングの講師、キャリア支援など、「教える」仕事をしてきました。
だからこそ、「教えること」は相手の成長につながるものだと思っています。
しかし、コーチングを学ぶ中で、「教えること」と「相手の成長を支援すること」は、似ているようで違う点があることに気づきました。
◆教えたくなるのは自然なこと
まずお伝えしたいのは、「教えたくなる」という気持ちは決して悪いことではないということです。
経験を積めば積むほど、
「この場合はこうした方がうまくいく。」
という自分なりの成功パターンが増えていきます。
だから、困っている人を見ると、
「その方法なら解決できるよ。」
と伝えたくなるのです。
特に仕事では知識や経験を共有することはとても大切です。
新人教育や業務の引き継ぎ、資格取得や専門知識を学ぶ場面では、「教えること」が必要不可欠です。
だから、教えること自体が悪いわけではありません。
では、コーチングは何が違うのでしょうか。
◆ティーチングとコーチングの違い
ティーチングとは、知識や技術を相手に伝えることです。
「知らないことを知る」「できないことができるようになる」ことを目的としています。
例えば、
新しいシステムの使い方を教える。
営業の流れを教える。
英語や資格の勉強を教える。
このような場面ではティーチングが効果的です。
一方、コーチングの目的は少し違います。
コーチングは、相手の中にある考えや価値観、可能性を引き出し、自ら答えを見つけられるよう支援するコミュニケーションです。
例えば、
「転職するべきか。」
「管理職に挑戦するべきか。」
「この仕事を続けるべきか。」
このようなテーマには、誰にでも当てはまる正解はありません。
だからこそ、「答えを教える」のではなく、「一緒に考える」という関わり方が大切になります。
つまり、
知識やスキルを身につけるならティーチング。
答えが一つではないテーマならコーチング。
このように目的によって
使い分けることが大切なのです。
◆自分で決めたことの方が人は行動しやすい
では、なぜコーチングでは質問を大切にするのでしょうか。
その背景の一つにあるのが、「自己決定理論(Self-Determination Theory)」です。
この理論は、心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンによって提唱されました。
自己決定理論では、人は「自分で選んだ」「自分で決めた」と感じられるほど、やる気が高まり、その行動も継続しやすいと考えられています。
例えば、上司から
「この資格を取りなさい。」
と言われて勉強を始めるのと、
「今後のキャリアアップのために、
この資格を取りたい。」
と自分で決めて勉強を始めるのでは、
同じ勉強でも取り組む姿勢は大きく変わります。
誰かに決められたことより、
自分で納得して決めたことの方が、
人は主体的に行動しやすいのです。
これは仕事だけでなく、転職やスキルアップ、目標達成など、
さまざまな場面で当てはまるのではないでしょうか。
◆だからコーチングでは質問をする
コーチングでは、
「あなたはどうしたいですか。」
「何を大切にしたいですか。」
「理想の状態はどんな姿ですか。」
そんな質問を通して、相手が自分自身と向き合う時間をつくります。
すると、
「本当は転職ではなく、部署異動を希望したかった。」
「まずは今の会社でもう少しチャレンジしたい。」
「やっぱり新しい環境に挑戦したい。」
など、本人の中から答えが見えてくることがあります。
相談者自身が、自分で見つけた答えです。
だからこそ納得感があり、その後の行動にもつながりやすくなるのです。
もちろん、必要な知識や情報をお伝えすることもあります。
しかし、その前に相手の考えを十分に聴くことで、その人にとって本当に必要な選択肢が見えてくることも少なくありません。
◆教えることも、引き出すことも大切
私は講師としてティーチングを行うこともあれば、コーチとして質問を通して相手の考えを引き出すこともあります。
どちらかが優れているということではありません。
知識や技術を身につけるためには、ティーチングが必要です。
一方で、キャリアや人生のように正解が一つではないテーマでは、コーチングが力を発揮します。
大切なのは、その人やその場面に合わせて、関わり方を選ぶことなのだと思います。
もし相手の成長を本当に願うのであれば、
一度立ち止まって考えてみてください。
「今、この人に必要なのは、私の答えだろうか。」
「それとも、自分で答えを見つける時間だろうか。」
この問いを持つだけで、相手との関わり方は大きく変わるかもしれません。
教えることも、引き出すことも、どちらも人を支える大切なコミュニケーションです。
その違いを理解し、相手に合わせて使い分けられることが、より良いリーダーシップやマネジメント、コミュニケーションにつながっていくのではないでしょうか。
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