選手を否定してしまう心理とは?コーチングで変わる指導法


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銀座コーチングスクール(GCS)広報チーム 赤川美佐子です。
 
スポーツの世界では、指導者の言葉が選手の成長に大きな影響を与えることがあります。

「君ならできる」と励まされ、自信を持って挑戦できる選手がいる一方で、
「何度言ってもダメだ」「向いていない」と言われ続け、自分の可能性を信じられなくなってしまう選手もいます。

本来、指導者は選手の成長を支える存在のはずです。
それなのに、なぜ選手を否定するような言葉をかけてしまうのでしょうか。

今回は、スポーツ指導における心理と、コーチングを活用した関わり方、
そして保護者にできることについて考えてみたいと思います。


■なぜ指導者は選手を否定してしまうのか?

選手に厳しい言葉をかける指導者が、必ずしも選手の成長を望んでいないわけではありません。

むしろ、成長してほしい、試合に勝ってほしいという強い思いがあるからこそ、厳しく接してしまう場合もあります。

例えば、自分自身が厳しい指導を受けて成長した経験があれば、「厳しく言うことが選手のためになる」と考えるかもしれません。

また、勝利へのプレッシャーや、思うように成長しない選手への焦りから、感情的な言葉が出てしまうこともあるでしょう。

しかし、ここで考えたいのは、「指導者が本当に求めているものは何か」ということです。

選手の成長を願っているのか。
それとも、自分の期待通りに選手が動くことを求めているのか。

この二つは似ているようで、大きく異なります。

指導者自身の成功体験や価値観が強すぎると、そこから外れた選手の行動を「間違い」と捉えてしまうことがあります。
けれども、指導者が「なぜできないのか」と苛立っているとき、選手自身も「どうすればできるのか」と悩んでいるのかもしれません。

大切なのは、自分の経験や価値観だけで判断するのではなく、
目の前の選手が何を感じ、何に困っているのかを理解しようとすることです。


■「できない」という言葉が選手の可能性を狭める

心理学者アルバート・バンデューラは、「自己効力感」という概念を提唱しました。
自己効力感とは、ある課題に対して「自分なら必要な行動を実行できる」と感じることです。

例えば、試合でミスをした際に、「次は工夫すればできる」と考える選手と、「自分には無理だ」と考える選手では、その後の行動が変わってきます。

後者は失敗を恐れ、積極的なプレーを避けるようになるかもしれません。
すると、挑戦する機会が減り、成功体験も積みにくくなります。そして、ますます自信を失ってしまうという悪循環につながる可能性があります。

自己効力感には、自分自身の成功体験だけでなく、周囲からの言葉も影響します。
特に、選手にとって影響力の大きい指導者から繰り返し否定されることは、自分の能力への認識を変えてしまう可能性があります。

最初は「コーチにダメだと言われた」という経験だったものが、
いつしか「自分はダメな選手なんだ」という自己評価に変わってしまうこともあるでしょう。

だからこそ、指導者には「言葉を選ぶ責任」があります。

もちろん、改善すべきプレーを指摘することは必要です。
しかし、「このプレーは改善が必要」という指摘と、「お前はダメだ」という選手自身への否定は異なります。

今できないことと、これからもできないことは、決して同じではないのです。


■選手を信じることは、甘やかすことではない

では、選手を信じるとは、何でも褒めることなのでしょうか。
決してそうではありません。

選手を信じるとは、目の前の課題を正しく捉えながらも、その人が成長できる可能性を諦めないことです。

例えば、同じミスを繰り返す選手がいたとします。
「何回言えばわかるんだ」と叱ることは簡単かもしれません。

しかし、選手は本当に理解していないのでしょうか。
頭では理解していても、実際のプレーでは身体が動かないのかもしれません。失敗への恐怖から、思い切った判断ができなくなっている可能性もあります。

ここで「何が難しかった?」「どうすれば次はできそう?」と問いかけることで、
指導者が気づいていなかった課題が見えてくることもあります。

コーチングでは、相手の話を聴き、質問や承認を通じて、その人の気づきや主体的な行動を支援します。

ただし、ただ質問すればよいという訳ではありません。
指導者があらかじめ正解を決めていて、その答えを選手に言わせようとしているのであれば、
それは形を変えた指示になってしまいます。

大切なのは、選手の本当の考えを知ろうとする姿勢です。

必要な技術は教えながらも、選手自身が考え、判断する余地を残す。
それが、自ら考えて行動できる選手の育成につながります。


■選手を変える前に、指導者自身と向き合う

コーチングを学ぶ意義は、選手への接し方を変えることだけではありません。
指導者自身が、自分の価値観や感情、思い込みに気づくことにもあります。

「なぜ、自分はこの選手に苛立ってしまうのだろう」
「選手のためと言いながら、自分の期待を押しつけていないだろうか」
「この選手の可能性を、本当に信じているだろうか」

選手の成長には時間がかかります。
何度教えてもできないこともあれば、昨日できたことが今日はできないこともあります。

そんな時、指導者自身が結果を急ぎすぎていないか、
選手の成長を自分の評価と結びつけていないかを振り返ることも必要でしょう。

選手を思い通りに動かすことと、
選手が自ら成長できるように支援することは違います。

コーチングは、選手の可能性を引き出すと同時に、指導者自身のあり方を見つめ直すきっかけにもなるのです。


■選手が否定されたとき、親にできること

特に子どものスポーツでは、指導者だけでなく、保護者の関わり方も重要です。
指導者から厳しい言葉をかけられた子どもに対して、「もっと頑張りなさい」「言われるのはあなたにも原因があるから」と伝えてしまうことはないでしょうか。

もちろん、努力や改善が必要な場面もあります。
しかし、子ども自身が傷ついているときに、家庭でも否定されてしまえば、安心して気持ちを表現できる場所がなくなってしまうかもしれません。

そんな時こそ、まずは「どう感じた?」「本当はどうしたかった?」と、子どもの気持ちに耳を傾けることが大切です。

そして、指導者の言葉をそのまま子どもの能力への評価として受け止めるのではなく、
改善すべきプレーと、その子自身の価値を切り離して考えることも必要でしょう。

「今はできなくても、これからできるようになるかもしれない」
そうした可能性を信じる姿勢が、子どもの次の挑戦を支えることにつながります。

ただし、人格を否定する言葉や威圧的な指導が繰り返されている場合には、
子どもに我慢を求めるのではなく、保護者が状況を確認し、必要に応じて指導者やチームの責任者に働きかけることも大切です。

子どもの成長を支えることと、傷つく環境に耐えさせることは違います。

親もまた、子どもを思い通りに動かすのではなく、その気持ちを尊重し、
可能性を信じて関わることが求められるのではないでしょうか。


■選手の可能性を信じることから始めよう

スポーツにおいて、技術や体力を高めることはもちろん大切です。
しかし、その力を発揮するためには、選手自身が挑戦しようと思えること、そして安心して失敗から学べる環境も欠かせません。

指導者も保護者も、選手を大切に思うからこそ、時には期待が大きくなりすぎてしまうことがあります。
だからこそ、相手を変えようとする前に、「自分自身の関わり方を振り返ること」が必要なのかもしれません。

選手が自分の可能性を信じられないとき、周囲の大人はその可能性を信じ続けられるでしょうか。

コーチングは、その問いに向き合いながら、相手の成長を支えるためのコミュニケーションを学ぶ機会にもなります。


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